「を」

オレンジ色の髪が風になびく。今日は少し風が強くて涼しい気がする。大都会東京。不快度指数はいつもより低めだ。今は待ち合わせ時間の15分前。毎回時間厳守の君は、いつも10分前に来るのを知っているよ。だから、俺は15分前行動。本当はさ、俺がいつ来るかな、なんてことを考えながら君を待たせるのも結構いいと思うんだけど、待たせるということは君を一人にするってことだから。何度も云うようだけど、ここは大都会東京。君を食べようとする厄介な虫もいるかもしれない。君は可愛いから、すぐに食べられちゃうよ。そんなの絶対に許せないし。君を味わうのは俺だけの特権。だから君を待たせないように早めに家を出て、君のことで頭をいっぱいにしながら、待ち合わせ場所に立つ。目印はこのオレンジの髪。染めてる訳じゃないよ。これは地毛。なんなら、下も見てみる?・・・うん、ゴメン。下品だよね。自重します。そして、きっかり十分後、君が「すみません」と謝りながら駆け寄ってくる。「全然待ってないよ」なんて軽く答えて。さぁ、デートの始まりだ。今日は何処に行こうか。まずは腹ごしらえしてからがいいかな。お昼時だものね。君の好きそうな店を前もって調べておいたし、ぬかりはないよ。さりげなく君との距離を縮めて。オススメのお店まで並んで歩けば。さて、今日の目標は手を繋いで歩くことかな。カランコロンと懐かしい音を立てて扉が開く。誰かに見られないように奥の席に座ろう。俺的には見せびらかしたいんだけどね。可愛い、可愛い君を。だけど、君は冷やかされるのが好きじゃないから。誰かに見られるのも嫌いだから。それに、君を独り占めするのも悪くない。ねぇ、何を頼む?今日のラッキーカラーは黄色だからカレーかな、俺は。・・・ん、それでいい?注文するよ〜。それから、買い物にでも出かけようか。映画もいいかな。ほら、こないだ君が見たいっていってたやつがあったでしょ?まだ見に行ってないならそれもいいよね。今ならあそこの映画館でやってるかな〜なんて話していると、ウエイターが注文をしていたものを運んでくる。一口食べて、君が美味しいという顔をする。自分では判らないかもしれないけどね。目がね、ちょっと輝くんだよ。うん。カレーも美味しい。やっぱり夏はカレーだよね。え?ほっぺたに米粒?とって、とって!ちょっと照れくさそうにして君が手を伸ばす。触れる口元。「有難う」「どういたしまして」そんな一連の会話が楽しくって仕方ない。今日はいい天気だなぁ。うってつけのデート日和。ああ、君が楽しいって思ってくれるといいな。そんでもって、俺のことをもっと好きになってくれるといいな。そんなことを俺はいつもの笑顔で君に向けて思うんだ。

(2005/9/5)

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