| 一度目の経験 ある夏の出来事です。私はその時受験生で、塾に通うかどうか迷っていました。とりあえず資料等を貰いに塾のあるビルの中に入りました。話し合いなども終って、どうしようかと考えながらも、同じビルの中にある古本屋さんに寄りました。その時はまだ車を持っておらず、母が迎えにくるのを待っていたのです。ふいにトイレに行きたくなったので店を出て、女子トイレから出てくる瞬間。ドアをあけて、お店に入ろうかと入り口までの数歩を歩みだしたその瞬間に、 なぜか若いお兄さんに胸をもまれました。 物凄いナチュラルに触られたので、あっけに取られるほどでした。その人はすっと男子トイレに逃げていきました。まだ若い、普通のお兄さんでした。多分20代でしょう。私は、事故かな?と思い、そのまま古本屋さんに入りました。人生には不思議なことがあるなぁと思いつつも、少年漫画を物色する私。そこにさきほどのお兄さんが近づいてきました。それだけならいいのです。でも、わざわざ私の隣にこなくてもいいではないですか。近いのです。吐息が聞こえるくらいに近いのです。ですが、きっと私がみているあたりに目当ての本があるのだろうと、BLコーナーに逃げ込む私。ふふふ、流石にここなら彼の目当ての本はありますまい。しかし、何時の間にか彼もBLの棚の横にあるラノベコーナーに移動しているのです。私が動くと同時にこっちにくるのはどうしてですか。先ほどの場所に目当てのものがあるのではないのですか。けれど、そんな細かいことは気にしてはいけません。私はBLを読むのです。明日の糧を得るのです。そうです、私は腐女子です。こんな女性に痴漢するだなんて考えられません。ついてきているというのもきっと私の妄想に違いない。そして私は読みました。読んで読んで読みまくりました。するとどうでしょう。そのお兄さんはどんどん私に近づいてくるのです。なんとなくですが気配がするのです。ああ、BLコーナーの向かい側の棚に行きました。やはり妄想です。痴漢なんてそうそう起こり得ることではありません。私は意気揚揚と買うべき本を見出し、店の外にあるジャンク本を捜索することにしました。私のたくましい妄想のせいで、痴漢だと間違われたお兄さんごめんなさい!と心で思いながら。そして私が店を出ると、何故かお兄さんも移動するのです。一瞬、え?と思いながらも冷静を保って私はジャンク本を物色。お兄さんはそのままジャンク本が並べられている場所の反対側の出口から去っていったかのように見えました。しかし、私が一旦、母親が来ていないかと外に出るとそこにはそのお兄さんが。誰かを待っているのかもしれないとビルから足を踏み出した途端、お兄さんは私の方へ近づき、 私の太い腕を掴んで、なにやら耳元で囁きました。 再びパニックです。何を言われたのかも判りませんし、そもそも腕を捕まれて動けません。どうしよう!と思った瞬間にビルからおばちゃんが出てきました。お兄さんは私から手を離して古本屋へと逃げていきました。私は硬直して動けません。するとそこへ母の車が。私は一目散に車へと逃げ込みました。またあのお兄さんに何かされたら困ります。早く車を出してください。私の願いは虚しく、トイレに行きたいからと母は私を置いて出て行きました。ですが車には鍵が掛かっています。安心です。安全です。安泰です。そして、あのお兄さんも幾らなんでもうちの母親に手を出さないでしょう。むしろ、手を出されたらどうしましょうか。私のちっぽけなプライドも傷つきます。母親が無事にトイレから戻り、車が発進しました。道中、私は母に今起こったことを洗いざらい話しました。それを聞いた母は一言、 「それは貴方の妄想よ」 と突き放しました。痴漢のお兄さん、今からでいいので私に痴漢をしたということを証明してください。あの罪は問いません。あまりにあっけなく母親に言い切られたことが悔しいです。 ***********************************************
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