「ウォン バイ 越前」 それは確かな達成感と、まぎれもない焦燥感。 〜こうして僕らは空に祈る〜 負けたくなかった。違う、負けられなかった。 俺が負けてしまえば全てが終るから。 跡部部長が繋いだ大事な一戦だった。 ここで負けてしまえば・・・・。 それでも勝利したのはあの生意気な一年だった。 (去り際に「また下克上させてあげるよ」と云われたので、 「夜道には気をつけろ」と忠告してやった。本当に腹の立つガキだ) 試合が終った。 彼ら、氷帝学園3年の夏は終った。 もうこれで最後。 泣きたくないのに涙が出た。 大粒の涙だった。悔しい。 涙なんて、意味がないのだ。 もう彼らはここで止まってしまうのだから。 「何泣いとるん日吉?」 「ったく、激ダサだな」 「ガキみたく泣いてんじゃねーよ」 「うっわ、跡部ひどっ!」 「はい、ハンカチ」 「ウス」 声を掛けてくれた先輩たちはどこか誇らしげで、 負けた俺を責めたりしなかった。 それが彼らの優しさであり、厳しさだった。 責められた方が幾分マシだ。 それでも彼らは何も言わなかった。 中学生活最後の夏を終らせた俺に何も言わなかった。 (それでもなんだかイライラしていたので関西弁のメガネを 割ってやった。ちょっとした憂さ晴らしには役に立つメガネだ) 来年の夏、俺はこんな風になれるだろうか。 貴方たちのように笑っていられるだろうか。 「よくやったね、日吉」 何時の間にか寝ていたジロー先輩が隣で笑っていた。 犬みたいに撫でられた。 (身長が足りなかったので仕方なくしゃがんでやった) 泣きたくないのに涙が出た。 大粒の涙だった。悔しくて、悔しくて仕方がなかった。 晴れ渡る空の下、 こうして僕らは空に祈る。 この涙をムダにはしないように。 来年の夏にはもう、 彼らは俺の前に居ない。
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