変なおじさん


それは私が自転車で登校していた時のこと。
寝坊していたのでかなり必死になって自転車を飛ばしていた。
田んぼ道を越え、曲がりくねった坂を越え、まばらにたたずむ住宅街を横ぎり、さぁ、このストレ−ト500Mを駆け抜けて駅までつっ走ろうと思っていた矢先に、奴は姿を現したのだった。


奴の特徴を上げてみると、まず第一に半ズボンであり、背中にはスポ−ツメ−カ−か何かのリュックサックを背負っていた。
リュックはいい。
しかし、
その日は暑さよりもむしろ寒さを感じさせる気温であったのを
考え合わせてみて欲しい。


半ズボンはないだろ。



だけど、それだけじゃただの村のおじさんに過ぎない。
奴の恐怖はこれからだった。

はじめに書いた通り、私は急いでいた。だから、その半ズボンおじさんを抜かして先に行こうとした訳だ。

「リズムに乗るぜ〜♪」

気分は神尾である。どちらかというと私の方が可笑しい。
でも心の声だから人には影響がないはずだ。
私はそんなことを考えながら半ズボンおじさんに近づいた。

そしたら、いきなり、

「うがぁ〜〜〜」





…今、嘘だと思ったでしょ?
私も嘘だと思いたかったよ。
とても朝の7時に聞くような声じゃない。
でも、実際聞いてしまったのだ。

「うがぁ〜〜〜」って。


そんな、氷帝のデカイ人じゃないんだからと突っ込むほどの余裕はなかった私は、ただビックリしてスピ−ドを落とした。



《・・・これは結構、ヤバイんじゃないの?》


恐怖のどん底に突き落とされた気分だった。

とりあえず、これ以上近づいたら殺られる!!!
と思っておじさんと距離をおいた。
そのまま十字路の道路を渡れば駅なのだが、
やはり世間様との通勤ラッシュに巻き込まれてしまって通ることが出来ない。

《こんなときに限って渋滞しないで欲しいよね。遅刻したらどうすんのさ〜》

まぁ、普通は車が全部通ってから渡るってのが交通ル−ルってやつな訳で、(本当なら道を譲るのが交通ルールだとは思ってなかったため)私は普段、この渋滞をひたすら我慢して通っていた。しかし、



やはり、というべきなんだろうか、奴は人とは違った感性の持ち主らしい。目の前に立ちはだかる車を物ともせずに、


迷うことなく突っ込んでらっしゃる〜(ガビ−ン)


久しぶりに驚きの表現にガビ−ンなんて使ったかもしれない。
でもそれくらいビックリした。間違えれば死んじゃうからね。
でも一番びっくりしたのは運転手さんだと思う。
おじさんがいきなり飛び出したので、急ブレ−キの音がそこらじゅうに響いた。そして奴は何事もなく渡っていったのだった・・・・・。


そこに残された俺はどうすればいいのだろうか?
見兼ねた運転手さんが早く渡ってくれというかのように、クラクションを鳴らした。 私は何故だか全てに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。




その後、車で駅まで送っていってもらった11月末に奴を目撃。
車に大声で文句を言っていた。
変わってない。
変わってないんだね。
成長なんてしてないんだね。

おじさんがいつか車に跳ねられるんじゃないかと心配する私。
母は言う。

「うちの犬と同じレベルね。」


・・・あのおじさんをしつけてくれる方募集。