あの人は、俺を困らせることしかしない。




苦手な人。




「海堂。」
「何すか?」
心持ち低い声で答える。不機嫌を装って。
「新しい練習メニュー。やってみるか?」
その人の手にはいつものノート、ではなく。
『俺用』のメニュー帳…。
「ひいきだ、って言われるっすよ。」
「言わせておけばいいさ。」
実際そうだし、なんてさらりと言ってのける。


だから困るっつってんだよ。
いつも同じ調子で喋るから、本気なんだか冗談なんだか分かんねぇ。


「で、どうする?」
「…やるに決まってんだろ。」
目を合わせないようにして、メニュー帳に手を伸ばした。


……?


伸ばした手は何もつかむことはなく。
「…何やってんすか。」
「『ありがとうございます、先輩v』は?」
「は?」


―――ほら、また。
俺を困らせる。


手を上に上げられたら、身長差的に取れるわけねぇってのに。
飛んで取るのなんて間抜けだし、絶対やりたくない。
だとしたら、方法は一つしかないわけで。
じゃあいらない、と言えない自分が腹立たしかった。
「…ありがとうございます、先輩。」
「…ま、合格かな。57点。」
微妙だな。
まぁいいかと、ノートを受け取った。
「一応言っときますけど、後ろにハートマークつけてないっすよ。」
「バカ正直だな、海堂は。」


―――その笑いかたも勘弁してほしい。
心臓が音を立てた。


「ちゃんと気持ちこもってたみたいだから、いいよ。」
「別に感謝なんかしてないっすよ。」
「構わないよ。」


―――どうしてそうなんだろう、と。
考えても、きっと一生分からない気がした。


「…少しだけなら、感謝してます。」
「分かってるよ。」



適わないと、思った。

 

 


++++++++++++++++
後書き
>海堂じゃなくてごめんなさい。
無駄に素直にしてしまった気が…そうでもないか?;
駄文ですいません…。
藤月祈悠サマ拝


>うわーい、海堂が素直だよー!!!可愛い〜ですねぇ。
全然駄文なんかじゃないですよ!!
また下さい。(あつかましい私。/笑)
んふふ、有難う御座いました。

2003/02/26