「き」

君の好きなもの。例えば部活帰りのコロッケや焼き鮭ハラミのおにぎり。自分は地味なくせに珍しい切手を集めるのが好きで。そうそう、好きな色はブラウン。マフラーや手袋なんかもこの色で統一してるし、私服もこの色が多い。原色とかは着ないの?目立つぞ〜!なんてからかったら、俺はこの色がいいの!なんて云いながら、「原色か・・・」って服みながら呟いたのも知ってるよ。それでも俺が勧めた服は「派手すぎる」って一喝されたりして。あの時、結構マジメに考えたんだけどな。まぁ、別に俺は君がどんな格好していてもいいんだけどさ。どんな変な格好してたって、君はずっと君のままだ。マジメでお人よしで、責任感があって。俺がどんな悪戯をしたって、絶対に許してくれる。そうやって調子に乗ってたのが悪かったのかもしれない。俺はこの一週間、南に口を聞いてもらってない。


<君が好きなもの>

 


あれは、ちょっと度が過ぎた悪戯だったかもしれない。実は先日、南の下駄箱に入ってたラブレターをこっそり読んじゃったんだよね。そしてそれを自分の鞄にしまいこんで。証拠隠滅。そのラブレターはなかったことに。だけど、運の悪いことにその一連の動作を東方に見られちゃって。そこから情報が広がるのが早かった。光の速度も目じゃないくらい。放課後、南にこってり怒られて、その女の子には非難されて、もう踏んだり蹴ったり。言い訳も悉く切り捨てられて、「お前とは絶交だ」なんていわれた日には、もう目の前が暗くなるってこういうこと言うんだなぁって思った。室町くんから、あの時の女の子が振られた、なんて情報を貰っても、ああ、そうなんだ・・・みたいな反応しか出来なくて。三年間、毎日のように南と喋ってたのに。どんなジョークでも反応してくれて、俺が落ち込んでるときとかも相談に乗ってくれたりして、南の、あの優しい声が俺の元気の素だったと、やっと気付いた矢先の出来事。見事にラッキー運は下がるし、部活でもミス連発。亜久津にも鼻で笑われて、後輩の愛想も尽きそう。そんなアンラッキーな俺に、次に降りかかるのは何だ?



「千石!」

そう呼んだのは確かに南の声で。どこぞの犬のように瞬時に反応しようとする。が、動けない。見渡せばそこは保健室で、隣にはイスに座りながら心配そうに見つめる南が居た。何が起こったのか判らない俺に、南がため息をつきながら、一連の事情をかいつまんで説明してくれた。

「まったく、ラッキーは何処に言ったんだ?」

聞けば、部活中、一年の放ったボールが俺の顔面にぶつかったのだそうだ。打ち所が悪かったのか垂直に倒れた俺を保健室に搬送し、東方および部活の面々が南をよこしたらしい。

「俺のせいでお前のラッキーが逃げてるってなんだよ」

南は、きっとわかってない。俺のラッキーの素が南だってこと。俺が南を好きだってこと。嫉妬なんてしないで、直接云ってしまえばよかったのかもしれない。あのラブレターを出した女の子に南を取られるのが嫌だから隠しましたって。君に振られることが何よりも辛くて、勇気がなくて、ずっと云えなかった。振られてしまえば、この関係が壊れてしまうんじゃないかって、そればかりが心配で。三年間、ずっと君だけを見ていたのに。俺はシーツを裾をぎゅっと握って、勇気を振り絞った。そしたら南はなんて云ったと思う?

「知ってるよ、そんなこと」

俺があんなに我慢して、押さえてたことが南には全部お見通しで。「だから、告白だって毎回断ってるだろーが」だなんて顔をそむけながら云ったのだ。それって、もしかして、そういうこと?南の顔が真っ赤なのも、俺の心臓が破裂しそうなほど波打ってるのも、二人が同じ思いを抱えていたって、そういう風に捕らえてもいいのかなぁ。


君の好きなもの。例えば部活帰りのコロッケや焼き鮭ハラミのおにぎり。珍しい切手集め。好きな色はブラウン。それから、今日知ったこと。君が好きな人は俺。


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11/25 千石清純  Buon compleanno!(ボン コンプレアンノ!)

凄く久々な千南です。ともかく誕生日おめでとう千石!上のはイタリア語。千石ってイタリア男性の陽気さを持っていると思います。今回はちょっとアンラッキーだけど、恋が叶ってよかったなぁって。(書いておいて何を言うか)千石で誕生日を祝うのはこれが初めて。こんなに好きなキャラなのに(笑)今年はなんだか千石ブーム(というか山吹ブーム)が巻き起こっているので、千石お題を中心に一層頑張っていきたいと思います。

2005/11/25 結城