ジロー先輩は眠るのが好きだ。いや、もう好きとかいうレベルではない。先輩=睡眠、なんじゃないだろうか。寝ていない先輩を見る方が難しい。野外でも、室内でも、処構わず好きなところで寝てしまう。それを迎えに行くのがどうして俺なんだろうか。それも部長命令で。あの人は樺地を私用に使いすぎだと思う。日傘持たせているから樺地は行かせられないって、どういう理屈なんだ。それくらい自分で持てばいいじゃないか。くそっ、下克上だ!

ひなたぼっこ〜室内快楽編〜


今日は天気もいいし、暖かいから、ジロー先輩は外だ。・・・・と普通の人は思うかもしれない。しかし、長年の成果もあって(こんな成果は別にいらないのだが)俺は知っている。最近、あの人はお気に入りの場所を見つけたのだ。まぁ、お気に入りの場所なら野外にも幾つかあるのだが、そこは跡部部長でさえ知らないお気に入り中のお気に入り。

「失礼します」

ドアをノックして部屋へ入る。まぁ、眠っている先輩しかいないとは思うけど、一応礼儀正しい俺としてはそうしないことには気持ちが悪いのだ。もしかしら、ジロー先輩以外にも人はいるかもしれないし。(まぁ、大抵そんなときにはあの人は起きているんだけども)ドアを開けると、ジロー先輩はやっぱり寝ていた。さすが、三年寝太郎(あだ名)だな。のんきにひなたぼっこしてる。人の気も知らずに。床にごろーんと寝そべるジロー先輩を見て、よくキレイかどうかも判らない床で寝れるなぁと的外れなことを思った。潔癖症という訳ではないが、俺には真似できない。そして、俺はジロー先輩を蹴り起こした。(単に揺さぶるだけではこの人は起きないし、担いで持って帰るのは樺地の専売特許だ)

「ジロー先輩、部活に行きますよ?」
「んぁ?ひよし〜」

起きたばかりの虚ろな眼で俺を見、手招きする。行くと押し倒されて、強制的に膝枕だ。それを判っていて近づく自分に呆れる。こんな人、放っておけばいいのに。フラフラと何処かに居なくなって、それなのに甘えてきて。身勝手な人だと思う。だけど、仕様がない。ほだされてしまったのだ。

「やっぱりヒヨの膝枕が一番好き」

膝でゴロゴロと甘えてくる先輩を見て、ため息をついた。向日先輩に「幸せが逃げるぜ!」なんてからかわれたりするけど、本気で苦労しているんだから仕方がない。元から幸せなんて大して持ち合わせてないし。だけど、こうしている瞬間は割と幸せなのかもしれない。

優しい光に照らされながら、愛しい人とひなたぼっこ。誰にも邪魔されない部屋での二人だけの秘密の時間。何時の間にか自分まで眠たくなってきてしまう。あくびを噛み殺しながら、部活に行かなきゃ、という思いだけが残る。そして。

「おーい、ひよC〜?」

目の前に迫るジロー先輩の顔にドキリとする。そして辺りを見渡すとあれだけ眩しかった太陽は沈み、暗闇だけが残されていた。・・・・・寝てしまった。起こしにきた自分が寝てしまうなんて。部活もとっくに終ってしまっているだろう。明日は跡部部長にどやされるのか・・・・。

「とりあえず、帰ろっか?」

手を繋ぎながらの帰り道で、俺はまた一つため息をついた。

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2004/10/19