一生刺激的?


○。夕暮れ炭酸飲料。○


帰り道で。
視線が、斜め上から俺の手の中に注がれてるのがヒシヒシと伝わってくるのが分かった。
「欲しいんスか?先輩」
「いや…別に……」
手に持っていた飲みかけのファンタの缶を差し出すと、海堂先輩は気まずそうに顔を背けた。
それが照れているときの仕草だってことを俺は知ってる。
「遠慮しなくても良いのに」
「炭酸は…あんまり好きじゃねぇ……」
「あぁ、口に合わなそうっスね」
先輩が炭酸飲料を飲んで咳き込んでる所が容易に想像できた。
その想像の中の先輩が可愛くて、思わず緩んだ口元を誤魔化すために俺はまた缶をあおる。
先輩はまたこっちを向いて、ファンタを流し込む俺を見ていた。
「好きでもないのに何で見てるんスか?」
「べ、別に……」
また別にって言う。
そう言われると余計に気になるのに。
「言わないと、ちゅーするッスよ」
「っ――……馬鹿っ!!」
「ぃ…ってー……」
真っ赤になって俺の頭をグーで叩く先輩は、相変わらず受け流すということを覚えない。
もっとも、その方が俺としては楽しくて良いんだけど。
「だって、聞く権利あるでしょ?そんなにジロジロ見られたら気になるッス」
後でたんこぶができそうな頭をさすりながらそう言うと先輩は小さく舌打ちした。
そして観念したように前に向き直ると、瞼を僅かに落とす。
「…お前の好きなものがどんなもんか、ちょっと興味があっただけだ……」
「……へぇ」
嗚呼、何て愛おしいことを言ってくれるんだろうこの人は。
先輩は俺に見られないように夕日に染まった顔を伏せ、ちょっと歩調を早めて歩き始めた。
合わせて歩いて、その顔をのぞき込んでやる。
「ねぇ、それなら一口飲んでみてよ」
「う……」
「はい、コレ」
半ば強引に押しつけるように飲みかけの缶を差し出すと、先輩は躊躇いがちにそれを手に取った。
「なんなら口移しでもする?」
「いらねぇ!!」
からかう言葉を受けて、先輩はヤケになったように缶を勢いよく傾けた。
こくり、と小さく先輩の喉が鳴るのをじっと眺める。
「―……」
何だか、先輩の中に流れて弾けるファンタは俺みたいだって考えた。
それは感覚的で、言ってみればエゴのようなものだった。
海堂先輩に関わるもの全てが俺で在ればいいんだって、そう思うから。

「どう?」
「ぅ……っげほ!…っ…げほ!」
案の定、先輩は盛大に咽せながら俺に缶を突き返した。
期待を裏切らない人で俺は本当に嬉しく思う。
「やっぱ苦手みたいッスね」
「…でも……お前はこれが好きなんだな…」
「うん、そう」
缶を受け取って自分も一口飲んでみせる。
喉の辺りで二酸化炭素が踊る、この刺激的な感じが俺は好き。
ちょっと理解できないって顔をしている先輩に向かって言ってやる。
「でも、俺は先輩の方が好き」
「っ……」
もう何百回言ったかも分からないのに、先輩は未だに好きという言葉に免疫がまるでないような反応をする。
なんて可愛いんだろう。
一生免疫なんか出来なくていい。
「先輩が一番好き」
「分かったよ……」
「大好きー」
「………」

先輩だって俺が一番大好きでしょ?

「……っ…」
俺と目が合って慌てて顔を逸らした先輩は、暫くしてから小さく頷いた。
最後に心で思ったことは、どうやら先輩に通じてしまったらしい。



炭酸飲料なんて時間が経ったら気が抜けて刺激も何もない、ただ甘ったるいだけなんだ。
でも先輩といる時間は、微炭酸だけどいつまでも刺激的なレンアイ。



少し炭酸が抜けて、少し温くなったファンタを一口飲んだ。
甘酸っぱくて、微かに鉄の味がして、喉にちくりと刺すような感覚。
これもまるで恋みたいだ。

「先輩、キスしたいな」
「調子に乗んな!」
「ちぇー」


今はまだ微炭酸。
でも、何よりも甘くて刺激的な貴方との恋愛。



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あとがき

結城さまにお礼のSS。
何気に初めて書きましたよリョ海。
仇で返しちゃった感が沸々と沸いてきます……ご、ごめんなさ…汗。


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<結城が何か云ってるよ>

どうしよう。こんなステキなリョ海貰っちゃっていいんでしょうか?
初めてでこんなに上手だったら極めたらどうなってしまうのかしら・・・。
なんだかエビで鯛を、いえ、毛虫で鯨を釣ってしまった気分なんですが(笑)
桃音様、本当に有難う御座いました。また機会があったら戴けると嬉しいです(オイ)


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