| ぽつり、ぽつりと。 雨が、降ってきた。 ・・・・・・と、 思っていたらザーザーという音に変わり、 私はため息をついた。 今日は傘を忘れている。 委員会の仕事が長引き、 親しい友人は用事があって帰ってしまっているし、 一人で寂しく帰ろうとしたところにさらに追い討ち。 「あ〜あ、ついてない。」 私は二度目のため息をついた。 そのとき、 「何、ため息なんてついてるのだ?」 背後からいきなり声をかけられた私は 驚きのあまり土砂降りでグチャグチャになっているだろう グランドを走り出そうとするほどだった。 (・・・なんていうと大げさすぎるかもしれない) 「し、鹿目くん、今帰りなの?」 声をかけてきたのは同じクラスの鹿目くんだった。 うちの学校の野球部のエースピッチャー様だ。 「お前は帰らないのか?」 「あ、私、傘忘れちゃって・・・・」 ここで雨が弱まるのをまっている訳です。 すると、「傘ならそこらへんに転がっているのだ」 と指をさしていう。 確かに誰かの忘れていった傘が一本、 もしかしたら捨てられたのかもしれない古い傘が そこらへんに転がっている。 だけど壊れた様子もなく、使おうと思えば使えるだろう。 それでも、 「人のものは使えないよ〜」 汚いとか古いとか、そんな理由じゃなく、 誰かのものを承諾なしで使うのは気が引ける。 親しい友人とかならば後で詫びれば済むことだが 誰のものかもわからないのに謝罪などできる訳がない。 だから使わない。 「それがあれば濡れなくてすむし、 また持ってくればいいことなのだ。」 鹿目くんは正しい。一般的には普通はそうする。 こんな雨が止むはずがない。 次第に増す雨を見たら、 なんだかそれもいいような気がしてきた。 「でも、」 頑なな心が邪魔をして 私にはその傘を使うことがどうしても出来なかった。 それを見た鹿目くんは私と同じようにため息をついてこういった。 「お前、駅まで行くか?」 (・・・・?) 「聞いてるのだ?」 (あ、怒ってる!) 「い、行きます!」 「じゃあ、早くはいるのだ」 端から見たらどんな風に思われるのだろう。 男の子と相合傘ってなんか恥ずかしい。 緊張するっていうか、 何しゃべっていいか判んないし そもそも鹿目くんとちゃんと話すのって初めてだし。 あーどうしよう。 「何、百面相してるのだ、お前は。」 「え!へ、へんな顔してた?」 「気まずいって顔に書いてあるのだ」 ご名答です。 「僕と一緒に帰るのに文句があるのか?」 「め、滅相もないです・・・」 「まぁ、僕は楽しいからいいのだ」 「いじめるのが?」 「・・・・・。」 あれ、黙っちゃったよ。 正解?正解だったの? いじめるのが楽しいの? 「・・・判ってないのだ・・・」 鹿目くんは小さい声で何か言っていたけど 私には聞こえなかった。 ***** 駅について、私とは反対方向に乗り込む鹿目くんが 手招きして私を呼んだ。 何かな〜とフラフラ寄ってきた私に、耳打をする。 「僕はキライな人間と相合傘できるほどお人よしじゃないのだ」 ・・・そうか、嫌われてはないのかと私は思った。 「・・・・まだ判ってないのだお前は・・・・・」 そういって、私の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜた後、 頭をなでられた。 優しく、優しく。 それがとても気持ちが良くて、 しばらくされるがままになっていた。 すると、ガタガタと電車が走りだしたではないですか! ちょっとまて、私の家は逆方向だ! 「え、ええ〜!!!!」 「クスクス、馬鹿なのだ・・・」 車内では鹿目様の笑い声が響きましたとさ。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 雨の日に鹿目におちょくられる主人公ちゃん。 久しぶりの夢小説vv |