あたしは先端恐怖症。その名の通り、尖った物が嫌い。
カッタ−やハサミは勿論駄目で、実はシャ−芯さえも駄目だ。
包丁だって恐いから、当然料理は凄い下手くそ。
けれど理由が何であれ、調理実習という魔の授業から逃るる術もなく、
あたしはさっきから野菜と睨めっこをしている。
<< May I have your order ?
>>
先ほどから包丁を片手に野菜と睨み合いをしている者がいる。だ。
そういえばは料理がさほど上手ではないようだ。
友人への誕生日やバレンタインデーなどの物は全て既製品であった。
まぁ、から貰えれば中身がどうであれ何でも嬉しいとは思うのだが。
・・・因みに我は貰った事がない。
あーどうしよう。包丁持ってるだけで嫌なんだけど。
いつもだったら適当に友達がやってくれるからいいけど、
今日は先生が適当に作った班だし。あんまり親しくない人ばっかだし。
あ−あ、ついてないな〜。
そんなことを思っていると同じ班の女子に
「さん。早くそれ切ってくれない?」と言われた。
だ〜か〜ら〜、こっちは切りたくても恐くて切れないんだってば。
寧ろ、代わって欲しいんだけど・・・。
こんなことなら料理の担当決めの授業サボるんじゃなかったな〜。
皿洗いとかが良かったのに。
む、が困っておる。どうかしたのだろうか。野菜が切れないのか?
まさか野菜がカワイソウとか思っているのではあるまいな。
優しいのことだ。否定は出来まい。
しかし、生きていくには糧が必要なのだ。それが食物連鎖というものなのだから。
「、」
横の班だった蛇神が話しかけてきた。
蛇神とはあんまり接点はない。ただ同じクラスというだけ。
たしか野球部だったような・・・ってくらいの認識しかない。
格好いいけどあたしのタイプではない。
どちらかというと鹿目君のようなちっちゃくて可愛い子が好きだ。
・・・まぁ、それはいいとして。
あたしがせっかく勇気を出して野菜を切ろうと決意したところだったのに、
出ばなをくじかれるってこういうことをいうんだと思う。
まあ、とりあえず返事はしておこう。
「何?」
「野菜にも命はあるが我々が生きる為にはその命を奪うのは仕方のないこと也。」
「・・・・。」
・・・・・・・突然何を言うんだ貴様は。
そんなこと言われてもどうしようもないっての。
あたしは蛇神を無視して野菜を切った。いや、切ろうとした。
正確に言うとあたしが切ったのは野菜ではなく自分の指だったからだ。
「痛ッ。」
血が溢れる。ああ、くそ。だから嫌だったんだ。
あたしに料理は向いてない。こんなのも満足にこなせないんだから。
血が溢れる。拭おうとも思わない。暫くすれば固まるだろうし。
別に構いはしない。だって、あの時ほどの痛みではないから。
あたしが先端恐怖症になったあの日よりはずっとずっとマシな痛み。
が指を切った。血が溢れておる。
なのに拭おうともしない。痛みで涙がにじんでいた。
****** 紅イ血ガ一滴、ポタリト床に堕チタ。******
ぱくっ
あたしの指が蛇神に食べられた音。
「!!」
「如何かしたか?」
アンタ、真顔で何やってんのさ。食うなよ、人様の指を。
ああ、あたしの周りの1M以内の人たち固まってるんですけど。
「唾液というものは殺菌効果がある故。」
いや、そんな説明いらないって。
「・・・・?」
心配そうな目でみるなって。むしろオマエの頭のがよっぽど心配だっての。
オマエ、周りの視線感じないのかよ?
「・・・・だわりゃぁ!!」
あたしは変な叫び声と共に蛇神を連れて保健室に直行した。
「で、なんのつもりよ。」
保健室には誰も居なかった。仕様がないので適当に絆創膏をはっておいた。
結構ザックリと切ったようでなかなか痛みはおさまらない。
こういうジワジワ苦しめられるのが一番嫌だ。
「・・・・・如何した?」
「如何したじゃないわよ!アンタ、何考えてるのよ!!」
人に突然、食物連鎖の話してきたり、切った指舐めたり。
とういう神経してんのかしら?つ−か、何様?むしろ阿呆ね。(決定)
「・・・・・・む、何をと言われると難しいな。」
「アンタの頭ん中にはデリカシ−とかはない訳?野球のことしか詰まってないの?!」
「・・・・・・・・。」
長い沈黙。
ちょっと言い過ぎたかなとあたしが謝ろうとするより早く、蛇神の口が先に動いた。
「我の頭の中は野球とのことでいっぱい也。」
「はぁ?」
何を言ってんのアンタは。
「わざと人気のないところに連れ込むなんてもその気なのだな?
焦ることはない。二人でゆっくり愛を育む也。」
・・・・・・・・・どうしようお母さん!この子、ネジが吹っ飛びすぎなんですけど。
ってか変な電波受信してるよ〜!!(汗)
「いや〜助けて〜!」
「嫌がるもまた良い也。」
よくね−よ。つか犯罪!それ犯罪!ギブ、ギブ!!
「、幸せにする也。」
「お母さ〜ん!!(泣)」
……暗転……?
結局その後、本気で泣き出したあたしを蛇神はなだめるだけで、
何もしようとはしなかった。
「さて、の嫌いな実習も終わる時間也。、もう少し此処にいるか?」
「・・・・なんで何にもしないのよ?」
蛇神ならあたしくらい平気で押し倒せるだろうに。いや、やられたら困るけど。
「我も好きな者に嫌われたくはない也。」
「十分嫌いだわ。」
「そうか。ならば好かれるよう努力をしよう。まずは料理の勉強也。
は何が好きだ?」
「どうして?」
「は料理、というか刃物が嫌いなのだろう?苦手を克服するのも立派だが、
どうしても駄目なものを無理をしてまでやることはない也。」
「甘やかすっていうのよ、それ。」
「はそんなに弱くないであろう?」
その時に見せた蛇神の笑顔は格好よくて。
悔しかったから布団を深く被って顔を隠した。あたしの顔は今、確実に真っ赤だ。
なんだよ、すっごくすっごく格好いいじゃないか。
誰だ、好みじゃないとかいったのは!!・・・あたしか。
「・・・・あたし、甘い卵焼きが好きだわ・・・・。」
「では明日作ってこよう。」
次の日、二人が仲良く一緒に卵焼きを食べていたとか。
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あとがきという名の言い訳
友人の錯診サマに押し付けてしまった蛇夢。
てか、卵焼きをつくるのには包丁は使わない。
主人公は普通に料理下手なんだってことで。