<晴れすぎた空の下>
7月の下旬、今日も奴は朝一番に教室入りし、朝練を行っていた。
いや、朝練というよりは修行といったところだろうか?
俗にいう瞑想とかいうやつだ。
「おはよう、蛇神。」
あたしはいつものように、蛇神に挨拶をする。
これはあたしの日課であり、結構何年も続いている。
「・・・・・良い朝だな、。」
「そうかな?いつもと同じだと思うけど?」
「否、同じような日はあっても、同じ日は二度とない也。」
只、繰り返すだけの単調な毎日。
自分も、この世界も何一つとして変わらないと思ってた。
アンタに会うまでは・・・・・・・。
「何を笑っておる?」
「・・・・ん−、蛇神と出合った時のこと、思い出してたらちょっとね。」
「ああ、確か・・・・・。」
そう、あれは確か今日みたいに天気が良くて、
雲一つない青空が広がっていた日。
あたしは徹夜で本を読んでいた為あまり寝ていなかった。
(ああ、フラフラする。)
今は放課後だ。授業中に寝れば良いものの
変に真面目な性格が災いしてまだ一睡もしていない。
キチンと寝ていないためか、身体も思うように動かない。
これから、塾に行かなきゃいけないのに。
あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。
その時のあたしは注意力が足りなかった。
ずるっ。
いきなりあたしは道端に落ちていたボールを踏んで、
まるでコントの様に見事にコケたのだった。
「っ、痛った〜い!何でこんな所にボ−ルなんてあるのよ!?」
きっと今ので何億個かの細胞が死んだ筈だ。
グッバイ、細胞!!また分裂して頂戴。
それにしても豪快なコケっぷりだったわ。
まぁでも誰も見てやしないだろうし・・・・。
「・・・・・・・・くっ。」
あたしは顔をあげて前を見た。
そこには笑いを堪えている蛇神の姿があった。
「・・・・・見たの?」
「・・・見事なつまづきっぷりであった・・・。」
かあぁぁぁと真っ赤になるのが判った。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
くそぅ、それもこのボ−ルのせいだ。
あたしはコケた原因であるボ−ルを掴み、蛇神に投げ返そうとしたのだが、
またもやボールの前でつまづき、前のめりになって倒れそうになった。
(ヤバイ。さっきはお尻で済んだけど、
脳細胞がコレ以上損なわれるのは勘弁したい…。)
そんなことを思いながらも地面は確実に近づいていく。
しかし、その途中で身体がふわりと浮くような気がした。
「・・・・・は何もない所でもつまづくのだな。」
気付くとあたしは蛇神に抱き抱えられていたのだ。
「大丈夫か?」
「うん、多分大丈夫。ありがと・・・・・うわわわわわわ!!」
さっきの倍くらい顔が赤くなる。
だって、不可抗力とはいえ、今、あたしは蛇神に抱き締められているんだから。
「む、暴れるでない。」
「いやぁ〜!!は、はなしてぇ〜!!」
あたしが暴れるので蛇神はそれを支えようとして更にキツク抱き締める。
「今離せば落ちる也。」
「それは駄目〜!!脳細胞は壊れたら元には戻らないのよ〜(汗)」
「・・・?まぁ、我はと抱擁できて嬉しい也。」
蛇神が無理な体制だったあたしを抱え直して言った。
「えっ?な、何で?」
「我はの事を好いておる。好きな者と触れ合いたいと思うのは自然の摂理也。」
・・・・・・・は?
今、なんと仰いましたか?好きな者?あたしがっすか?
「ワンモアプリーズ?」
「・・・・好きだ。」
あたしは其の一言で数秒はフリーズしていたらしい。
「もう戻らねば。では、いずれ・・・。」
と去っていった蛇神の後姿を、只ぼんやりと見つめることしか出来なかった。
それから塾から家に帰る途中、
さっきまでの天気が嘘のように雨がザーザーと降り注いだ。
そんな中、あたしの頭の中は蛇神のことでいっぱいだった。
しかし、眠さとかが混ざり合ったあたしの頭は
一度に何種類のことを考えるようには出来ていないらしく、
あたしは自分に突っ込んでくる車に気付かなかった。
「危ないっっっ!!!!!」
そう叫ばれた時にはもう既に遅かった。
車が自分にぶつかって潰されて死ぬかと思った。
もう駄目だ・・・・・・・。
もう駄目だと思いながら、
あたしはこれでやっと自由になれるんじゃないかと密かに考えた。
只、繰り返すだけの退屈で単調な毎日ではなく、
何かしらの変化が訪れるのだと思った。
静かに目を瞑る。揺るがない何かに身を委ねるかのように。
しかし、訪れるだろう苦痛は感じられない。そろりと目を開けてみる。
そこにいたのは、蛇神だった。
「歩行中に考え事は禁物也。」
「・・・・どうして・・・・・?」
「・・・・・・・心配した。」
キツク抱きしめられた。
蛇神は泣きそうな顔をしていた。
あたしが考えてたことが分かったんだろうか。
どうしよう。心が苦しくなった。
バカなことを考えてたあたしが情けなくなった。
あたしはまだ死ねない。
この人をおいていけないと思った。
蛇神とだったらこの毎日から抜け出せるような気がする。
そんなあたしの直感を、信じたいと思った。
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「あたし、アンタといれば変われるような気がしたのよね。」
「それで、何か変わったか?」
「まあ少しは。蛇神のことも判ってきたし。意外に可愛いものが好きだとか。」
「・・・・・。」
「大好きよ、尊。」
「我もだ。」
それはとても晴れた日で
未来なんていらないと思ってた
私は無力で
言葉を選べずに
帰り道の匂いだけ
優しかった
生きていける
そんな気がしていた
writer:Cocco
END
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Coccoの「晴れすぎた空」からイメージして作った初めての夢小説。
錯診サマに押し付けてしまった作品です。