”三日月の夜には兎が落ちてくる。”

そんなお伽話聞いたことないだろうか?
でも、それはお伽話なんかじゃなくて、本当にあった出来事だったりする。


THE MOON



チチチチチ・・・。
雀の鳴き声で目が覚めるなんて、久しぶりだ。
部活で疲れているとはいえ、いつもギリギリじゃないと起きれなくて、
いつもは毎回母さんの声で起されてるのにこんなに早く起きるなんて、
きっとこのあたりから何かおかしかったに違いない。
今日は日曜日。
しかも部活はなしという条件が揃っていたからかもしれないが、
こんなことになるくらいならば、
遅刻の方が数倍はましであったと今は思う。
そのくらい、今から起きることは大変なことであるのだが
俺はそれに気付くはずもなく、
とりあえず、顔を洗おうと洗面所に向かった。



おはよう

俺はダイニングテーブルで朝食を取っている父に挨拶した。

「おはよう」

新聞を読みながら挨拶をする父。
顔が新聞で隠れているせいで、その表情は読み取れない。
横から母が朝食を並べていく。
卵焼き、焼き魚、昨日の残り物の煮物とてんぷらなど計六品。
なんだかいつもよりおかずの量が多いような気がするが、
あまり気にしないことにした。
きっと、作り過ぎたのだ。
そう思い、さぁ食べようと箸を握った、まさにそのとき。


は、これが地球の朝ご飯てヤツか。なかなか美味そうだな。


ちなみに言っておくが、戸籍上、神尾家は両親、姉と俺の4人家族だ。
父の女癖だって悪くない。

そんな普通な一般家庭の日曜の朝に邪魔者が一人。


誰だ。


しかも、奴はなんて言った?
地球?
じゃあ、お前は何処のお人なんですか?
遠い銀河系の王子様かなんかですか?
と突っ込みたかったが心うちで我慢した。
ちょっと偉い、俺。


そんな俺の心うちとは裏腹に、この銀河系王子(推定)は
箸の使い方を教わりながらも母の作った朝ご飯をもくもくと食べていた。


こんなものは食べたことが無いな。あとで樺地にでもつくらせよう。


ア然とする俺に母が耳打ちする。
「昨日お父さんが連れてきたのよ。拾ったとか言って。
いい男ね。お母さん、可愛らしいっていわれちゃったーvv」

多分、それはお世辞だ。

父さん!!!!
こらえきれず俺は父の名を呼んだ。
日ごろから気弱な父の肩がビクリと動いた。

誰だよ、コイツは。
未だのん気にご飯を食べている銀河系王子(仮)を指差しながら、
俺は怒りを比較的抑えながら答えを促した。

「え、いや昨日道端で倒れてたんだよね。
お父さん、つい拾ってきちゃったよ。はっはっはっ。」

王子は犬猫と同じ扱いか?
拾ってきたじゃ済まんだろうが。

俺は天然ボケ夫婦じゃ埒があかないと
話題の中心である王子に直接聞くことにした。


お前は何者だ。


我ながらそれは直球すぎだと思う。
しかし王子は顔色ひとつ変えず、俺の顔をじっと見つめたのち、こう言い放った。

お前、なかなか可愛いじゃねーの

いや、質問に答えろよ。
頭のネジ、やっぱり吹っ飛んでるんじゃなかろうかこの男。
というか、俺は男だ。
可愛いなどといわれても嬉しくも何ともない。


えーと、俺はあんたが何処の誰かってのを聞いているんだけど?

こめかみがピクピクいうのを抑えながら、今度は丁寧に聞いてみた。
今度こそ答えてくれ。
心の中で願いながら相手の反応を待つ。

俺は・・・・・、

言葉が通じたみたいだ。
ナイス!!グローバルコミュニケーション!!!!!!


俺は太陽系第三惑星地球の衛星である月の王国の王子だ。
名前は景吾という。まぁ、正式名称はお前らに云っても理解できないだろうからな。



ホント、何言ってんだこの人。


昨日の晩、三日月だったろ?それで王位を狙っているヤツに突き落とされたんだよ。ったく帰ったらただじゃすまさねぇ。アイツラ一生こき使ってやる。


・・・あのーまったく話がみえてきませんが。


まぁ、とりあえず帰れる目処がたつまでここで世話になってやるから。


は?


宜しくたのむぞ。・・・おい、お前名前はなんだ。
ア、アキラだけど。
アキラか。樺地よりは役に立たそうだがまぁいい。
お前を俺様に仕えさせてやる。ついでだ、俺の嫁になれ。



「良かったわねアキラ。玉の輿じゃないの。」
「うんうん、若いっていいなぁ。」






・・・・・・・・・・・・・・・なんか間違ってやしないか?
しかも、もの凄く。
この朝ご飯つまんでる人が本当に王子な訳?
そんで俺はその嫁なんですか?
・・・・・・夢だ。夢に違いない。これは夢。しかも悪夢だ。
俺の日常はごく普通だったはず。
ていうか男同士じゃ結婚も何もできやしねーだろうが。



おい、アキラ?

横にいる青い目の兄ちゃんは要病院だ。
ついでにうちの両親も検査してもらった方がいい。
ん?
・・・・・・ない。
この人、耳がないんですけど。



景吾さ、ん?あの、耳は?
ああ、俺の耳か?ここにあるだろうが。

と頭の髪の毛に隠れて見えてなかった耳がぴょこっと出てきた。
なんと、

うさぎ耳。

やっぱり夢だ。なんでバニーなんだ。
駄目だ。もう思考が働かない。いっそ手放すか。

そして俺はこの夢が覚めることを願いながら、ぷつりと意識を失ったのだ。



チチチチチ・・・。
雀の鳴き声で目が覚めた。今日はちゃんと学校の日だ。
テニス部の朝練に出なくちゃいけない。橘さんや深司たちが待っている。
早く起きなければ。

ん〜なんだもう朝か?

隣に何かいるみたいだが幻覚だ。

昨日は良かったぜ、アキラ。

声も聞こえるが幻聴だ。

俺も早く仕度するか。

何もかも全て嘘っぱちだ。

おいアキラ、早くご飯喰わないと遅刻するぞ?


うさぎ耳がぴょこりと動いた。



ギャー嘘だといってくれーーーーーーーー!!!!

神尾家ではこれから毎朝、アキラの絶叫が聞こえたという。

END

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昔のオリジナルの原稿をベカミとして書き直してみました。
最初は王子=観月で作っていたので、跡部サマ語は難しかった。
会話文は大体書き直した・・・。
この後のお話も書いてみたいなぁ。
2003/08/24(2005/08/25改訂)